私たちは生きていくために、モノ(やサービス)を消費する。人 類の歴史を振り返ってみると、はじめは必要なものを自分ひとりで 手に入れていた。つまり、自給自足を行なっていた。しかし、社会 が発達するにつれ、必要なものを自分ひとりで手に入れるよりは、 「交換」を行なったほうが効率的であることが知られるようになり、物々交換が行なわれるよ うになった。
ところが物々交換では、自分が差し出すものと相手が欲しいものがうまく一致しなかったり、 自分の欲しいものがその場にないと、取引が成立しにくい。それを解決したのが、お金である。 お金を介することで、目の前にないものとも「交換」ができるようになったわけで、取引が時 間的にも空間的にも飛躍的に拡大したのである。
貨幣の「貨」の字をもち出すまでもなく、太古のお金は貝殻や石だった。やがて、もっと扱 いやすく、貴重な物でもある金や銀に変わっていった。
専門家によると、太古の日本では、琉球地方の貝が本州の広い範囲に流通しているが、それ はあくまでもアクセサリーであって、貨幣ではなかったという。それどころか、中国から銅貨 が輸入された当初も、貨幣としては使われていなかったという。ご先祖様は物々交換から貨幣 経済へ、すぐには移行できなかったのだ。
お金の誕生と同じぐらい劇的なのが、紙幣の出現だ。日本で最初のお札は、約四〇〇年前に 伊勢山田の商人たちが発行元になった私札「山田羽書」である。これは銀貨の端数勘定用だっ た。銀一匁が「銀一匁」と書かれた紙に変わったのは、まさにお金が情報化している。世界で 最初の紙幣は中国四川省で、いまから1000年も前の九九七年につくられた。こちらも私札 だったが、すぐに国が発行するようになった。
紙幣は金などと交換できることを国家が保証していたから、金と同様に扱うことができた。 日本では現在、法律によって強制通用力という力を与え、日本銀行には発行したお札に相当す る金や国債などが保管され、その価値を保証している。
お金の形は金属でも紙でも構わない。お金とは基本的には情報なのである。デジタル時代の いま、お金がデジタル信号の情報に変わるのは、お金の歴史を振り返れば、自然な成りゆきな のだ。
石や貝から金、紙幣へと変化してきたお金だが、石、金属、紙 (と印刷)それぞれの時代の文明をも象徴しているものだ。そ して現代、高度の経済発展を支えている根底にコンピュータとそれ によるコミュニケーション技術が存在するが、新しいお金として登 場する電子マネーは、そうした現代文明にマッチしている。
電子マネーは、見かけの上で二つに大別できる。一つはTCカードてスマートカード)と呼 ばれるクレジットカード大のカードにICを埋め込んだシステム。もう一つは、通信ネットワ ークのなかだけに存在するものだ。ただし、実態はどちらも暗号化されたデジタルデータだ。
しかし、この二つは見かけだけではなく、目ドのところ、主な川途にも重要な違いがある。 ICカード型の電子マ恥ドは、。紙幣、硬貨に次いで第三の貨幣を目指し、現実の社会で使われ だした。一方、後者のネットワーク型の電子マネーは、インターネットでの支払い(決済)を 主目的としている。
決済を重視するネットワーク型は、ネットワーク上での取引が盛んになってきている米国で 非常に期待されている。少額の買い物は一般の商店でも必要 だが、インターネット上では日常生活以上に少額の商品やサ ービスが多く、利用者が多いと見られている。
クレジットカードで少額の買い物の支払いをするのは、コ ストがかさむためにむずかしかった。しかし大手カード会社 は、少額の買い物は電子マネーで、高額なのはカードでと、 すべての支払いを取り扱おうと狙っている。
このようにコンセプトの違うものをごっちやにして説明さ れることが多いために、電子マネーの話がわかりにくくなっ ているように思える。電子マネー時代が現実のものとなって いないので、クレジットカードの代替が主目的のものから、 現金と同じ機能を持つものまで、どの方式が主流となるのか はまだ、明らかになっていない。
もちろん、真の電子マネーと呼べるものは、現金と同じ機 能をもって現実社会でもネットワークでも流通する電子マネー だ。ただし、このタイプの電子マネーの発行は、通貨の発 行という国の事業に相当するものだけに、抵抗も大きそうだ。
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ICカード型の電子マネーの特長 サインは不要。待たずに支払いができる |
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現在使用されているICカードとは |
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